*乱読事始め*

気の向くままに視覚に入った本・インスピレーションを感じた本の感想を書いてみます。

平成経済事件の怪物たち

かって世間を賑わせた経済事件、スキャンダルは一体どんな事件だったのか?
突然、メディアを騒がせて どうなることかと思っているうちに
これまた 突然の幕引きで有耶無耶になり、
『結局、あの騒ぎの結末はどーなったんだろ?』ダイジェスト版で
レビューするのに良い内容です。

すでに鬼籍に入ってしまった主人公もおりますが、現在、表向きは
ひっそりと隠居されてることになっている主人公もいるので、
再び 経済事件で世の中に出てこない事を切に祈ります。
悪事千里を走る。今はネットで暴かれる?の方が正しいかな?

この本に登場する15人の怪物たちは以下の通り: 凄いメンバーです。

高橋治長銀を潰した男
許 永中    最後の大物フィクサー
磯田一郎  住友銀行天皇
田淵節也  証券界のドンの特攻経営
尾上 縫     興銀を掌で転がした美人女将
金丸 信     佐川急便と5億円闇献金事件
小沢一郎   政治と金の呪縛
田谷廣明、中島義雄  接待汚職で失墜した大蔵官僚
早坂太吉、末野謙一、佐佐木吉之助  不動産神話の申し子達
武井保雄    武富士サラ金帝国の滅亡
村上世彰    ファンドバブルの鬼っ子

とまあ、帯の表記に従ってラインナップしました。
人物の後にサブタイトルを付けて どんな事件に絡んだ主人公なのか
分かり易い表記になってます。

私感ですが、この15人の中でトップ3のランキングを付けるとしたら
私はこの3人を選択します。

第1位  磯田一郎
三井物産に勤務するエリートの父を持ち、不自由なく勉強に専念、
京都帝国大学法学部を卒業後、住友銀行へ入行。
学生時代はラガーマンとして活躍し、文武両断の名バンカーとして
若い頃から銀行界では有名な存在。
取締役に就任したのが 1960年 46歳!! 当時にしてはかなり若い重役である。

ここまで書いていて、ゲンナリするのは…血統の良いお坊ちゃんが
仕事でも成功して同期をぶっちぎってトップで取締役に就任。
怪物に変貌する必要は無いと…思うんですが。
この後が問題。
順調に出世して77年に頭取就任。絵に描いた餅のような出世物語です。
これで双六は上がり?と思いきや、83年に会長に就任。
その後は13年も会長として居座って銀行を私物化…怪物になってしまったんですね。
権力とは恐ろしい。

腑に落ちないのは本書に実績として
『安宅産業』の破綻処理…と記載がありますが、この破綻処理 に尽力されたのは
現場で陣頭指揮をとっていたバンカーの方々なのでは?
 当時の状況を赤裸々に書かれた 『ザ・ラスト バンカー』を読んでいたので
磯田一郎氏が本件に真摯に問題解決の為取り組んでいた様には思えません。

むしろ『イトマン事件』の 張本人で愛娘可愛さの余りに銀行を食い物にし、
結局 だんまりを決め込んで鬼籍に入った。ー 身勝手な人の印象が強い。
本書の磯田一郎の章の最後の一文に
かっての住銀時代の部下が礒田氏の病床を見舞う事は無かった。と締めくくられていますが、
当然ですよね。最後は慕ってくれる部下も失ったということですね。
天皇と仰がれてもこんなバンカーになってはいけない!の見本です。

一つだけ磯田氏の決断で生まれた副産物といえば、
アサヒスパードライ。
86年に確執が深まった天敵、樋口廣太郎氏をアサヒビールへ片道切符で送り込んだのは
正しい判断?。樋口氏がいなければ、アサヒスパードライも存在しなかったことでしょう。
と…言われています。
副頭取の樋口氏に不都合なことを意見されたに磯田氏は、灰皿を投げつけた‼︎?との
伝説があるのですから…樋口氏にとっても転出は吉だったんでしょうね。

読んでいて不愉快な気持ちにさせられた章でした。

第2位  小沢一郎
言わずもがな、政界のカメレオン。
この人を怪物と言わずして、誰を怪物?と呼ぶのか?
政治資金規正法違反で一人無罪を勝ち取った挙句、民主党員資格停止処分の後に
結党したのが『国民の生活が大事』ですからね。
このフレーズをポスターで見た時は卒倒しそうになりました。

今後はどんな巻き返しを測るのか? 
一説には 小沢氏が総理大臣に就任したら、日韓、日中の外交問題
収まると言われているだけに今後の動向に目が話せません。


第3位 田谷廣明、中島義雄の大蔵官僚コンビ
公僕たる官僚の役割を逸脱した不届者。
ノーパンしゃぶしゃぶと小銭で操られるな!!と言いたい。
彼らを含めた 大蔵(財務省)・日銀 官僚の接待汚職の摘発は、
国民に根深い疑念の目を植えつけたと思う。
彼らの様な官僚に日本の財政をお任せしてよいのだろうか????
本気で心配になってくる。だけど 深く考えてはいけないかもしれません。
税金を払うのが嫌になってしまうので。


番外編: 武井保雄  
死して 尚、タダでは死なない人物…
一体何のCMだか不明の シンクロナイズ・ド・ラブ に乗って踊る
武富士ダンサーズのスポンサー。貸金業武富士 創業者である。
本書では成金親父の紆余曲折の末、成功したのち、蓄財失敗で破綻。といったストーリー。
私の印象としては 逝去した後、武井家相続税裁判の顛末の鮮やかさに拍手喝采である。

平成も26年が過ぎ、子供の頃に騒いでいた?あの事件の真相を知るには
オススメ致します。
過去の事件を紐解いて、
知れば知るほど、池上彰さんのコメントを思い出します。
30年経過すると世代が交替するので、同じ様な事件が起こる。
学習しておいた方が良い様です。