不動産関連本:空き家問題-1000万戸の衝撃
本を読んではいるものの、アップデートをさぼりにさぼって、早くも1か月半。。。。
このところ、不動産関連本ばかり読んでいたので、頭の中はビジネスモード。
内容がネガティブなだけに
メンタル的にはあまりよろしくないですが、頑張って読んだ
理由は2つ
<その壱:不動産バブルの再来?>
不動産ブローカーの現場はかなり特定エリアにターゲットを絞って、投資物件や遊休土地を探している一攫千金を狙った人々で溢れており、都市の一等地では
ビジネスチャンスを狙って虎視眈眈とうごめいています。
もちろん私のような一般人はカヤの外ですが。(笑)といままでは笑っていられたのですが、近頃はそんな余裕はありません。
我が家は一応、戦略特区エリアにかろうじて入ってしまったので、
毎日のように不動産エージェントからかかってくる「売りませんか?」のお誘い
セールスに正直いって。。。辟易してます。とはいえ、
一歩先を行くべく、空き家のもたらす影響・課題を頭に入れておきたい。
<その弐:高齢化の波>
2020年には4人に1人が高齢者となる現実を直視するべく、
さまざまな討論・議論が各自治体を中心に活発になっているが、果たして実際はどんなものか? 不透明で不安です。
特に近所の空き家が朽ち果てている様を現実におこっている現象として目の当たりにしつつも、東京オリンピックまでは、なんとかなるさ。といった風潮に国民全体が流されてしまっているように感じている。
振り返って己は来たるべき空き家問題に対応すべく策となる指針はないものか?
予想として俯瞰できるようにしておきたい。
不動産投資をしている人は避けて通れない問題なので、
知識として一読をお勧めします。
本書は5部構成となっており、
1章から3章は 空き家の抱える問題点に注視し、著者の持論展開。
4章から5章は 空き家問題の対応策ー著者の提案
となっている。
今回は 空き家問題にフォーカスして知識の引用、また
現実問題に対応すべく、記録として書評を書いてみました。
第1章 増加し続ける日本の空き家
プロローグから現実問題を思いっきり突きつけられます。
総務省では5年に1度の割合で全国を対象に「住宅・土地統計調査」を行っています。平成20年(2008年)の調査結果によれば、国内の住宅総数は5759万戸、平成15年から比べると、人口の伸びない中で、5年間に370万戸、6.9%も伸びています。一方空き家数は住宅総数の増加率を上回る14.6%、97万戸も増加し、総数では757万戸に達しています。これを総住宅数に占める割合(空き家率)でみると、13.1%になります。前回調査で 12.2%ですから、作れば作るだけ空き家の割合がどんどん増加していくのが今の日本の状況ということがわかります。
さて、この増加の状況ですが、このままいきますと、平成32年(2020年)の東京五輪開催の時にどうなっているのでしょうか。過去5年間で97万戸、つまりこのまま毎年20万戸空き家が増加していくと仮定した場合、平成32年(2020年)までにプラス240万戸となり、空き家総数はなんど1000万戸の大台に到達してしまいます。
ここまで、ざーっと読んで、空恐ろしくなりました。
さらに読み進めてみると、もっと厳しい現実。
世帯全体に占める割合も高齢者単身世帯で昭和58年(1983年)にわずか2.8%にすぎなかったものが平成20年(2008年)では8.3%に膨れ上がっています。この調子で増加が続けば、日本の住宅の10軒に1軒はお年寄りの「おひとり」住まいということになってきます。
この数字はかなり信憑性が高い。
都心の一等地でも放置された空き家は増加傾向にあります。
高齢者でも住んでいれば、多少でも建物がお手入れされますが、
相続された場合は 相続人に財力がなければ、解体もままならず
そのまま空き家として放置。
人気のなくなった家は犯罪者の隠れ場所になってしまったり、
浮浪者が住み着いて占拠してしまったり。。。
さまざまな弊害を招く要因になります。
行政も各地域によって条例を適用し、空き家対策として解体費用を補助金として
一部負担するという策も取られていますが、高齢者と空き家の増加に現状が追いついていけず、運用の方法を間違うと破綻。。。。その場しのぎにすぎない。延命策であり、解決の糸口とは言えない。
つづいて、
かつては人口の伸びや核家族の影響化で、いわば細胞分裂のよう世帯数が分割され世帯数が増加してきたのが、日本の姿でした。
現在の日本は、すでにある2人ないし3世帯が子供の独立や配偶者との死別、離婚などによって、世帯としての規模を縮小しながら高齢者単身世帯に収斂していくという姿に変質してきているのです。
と続く。
この章では首都圏人口比率における高齢者人口の増加により、市場の求めるニーズと現状が乖離していると警笛を鳴らしている。
この現状を数値で示すと
65歳以上を 「高齢者」と定義し人口構成からみると、
高齢者が首都圏全体の人口に占める比率=高齢者比率は 20.7%
過去の推移からみると、
昭和55年(1980)は 7.0% だったので、35年で3倍の勢いで急伸している
のがわかる。
このデータを今後の首都圏における人口推移予測も加えて推測すると、東京五輪を迎える平成32年(2020)には 首都圏の人口「3200万人に対して高齢者は926万人
高齢者比率は26.5%となり、首都圏で暮らすお年寄りの数は4人に1人となります。
さらに踏み込んで、「地方都心の悲鳴・賃貸住宅は空室の嵐」を読み進めてみると
日本の各地で賃貸住宅の空き家が急増しています。
平成10年(1998)の調査では全国の賃貸用住宅の空き家数は352戸、10年後の平成20年(2008)の調査では413戸。実に17%の増加です。
安定していた家賃収入が得られる土地有効活用の優等生は過去の話。
と認識させられます。
第二章 空き家がもたらす社会問題。
ここの章では 高齢化により空き家が問題が
どんな現象で現れ来るのか? 起きているのか?
具体例を示してくれている。
売りたくても売れない不動産
「高級戸建」 だれもが羨む簡素な住宅街。以前よりも
価格は落ちたとはいえ1億はくだらないエリアですが、まったく売れない。
ニーズがない。 価格云々というよりも ニーズがない。
2040年には空き家率40%時代に?
住宅投資額と住宅資産額の推移につい興味深い文章を見つけたので
そのまま引用します。
国土交通省によれば日本ではおおむね毎年約十数兆円もの住宅投資がおこなわれているが、国民経済計算のデーターによれば日本の住宅資産額(つまり価値)は常に220兆円から250兆円ほどで価値は上昇していません。
換言すれば、価値の増加しないマーケットに毎年十数兆円もの新たなお金がつぎ込まれている極めて珍しい国ともいえる。
その新築住宅をいまでも変わらずにありがたがって購入しているのですから、日本の住宅メーカーはよほどの知恵ものという見方もできる。
実際には新築住宅の価値は時間の経過とともにどんどん低下し、10年で半値、25年ほどで建物価格はほぼゼロになるのが日本です。
この減額を補うだけの土地価格の上昇があれば、新築住宅を偏重考え方は理解できるが、実際にそれだけの価格上昇を実現できる土地は、今や日本の中でもごくわずかでしょう。
ということは、東京都内23区の中でも「戦略特区」以外は価格上昇を期待できない。
くわえて、空き家と税金の問題が目の前に迫ってくる。
これもそのまま引用してみよう。
固定資産税には各種の特例措置、調整措置があり、「住宅用地の課税標準の特例」といって、敷地面積のうち200㎡までの部分を小規模住宅用地と定義し、課税標準を登録価格の6分の1にするという調整措置です。
今までは住宅として利用していたわけですから、この特例が適用されていたわけです。
税額が15万円とか20万円と言っていたのは、実は6分の1に減額されて調整後の税額だったわけです。
ところが、土地の上にあった家屋が消滅すると課税標準計算上は「住宅用地」とみなされず、ただの更地としてカウントされてしまいます。
つまり、敷地面積が200㎡に以下だった家屋については解体更地化し間に固定資産税は「6倍」に跳ね上がることになるのです。
こんなカラクリがあれば、だれも相続した空き家を解体して更地にしようとは思わない。
これでは今後土地の維持が出来ない。→ 何のために相続したのかわからない!
何の利益も生み出さない資産を引き受ける事になってしまうのです。
税金の問題が絡んでくると。。。事はさらに深刻に。
まずは 評価額を算出する上で算出の根拠となる路線価評価とは?
方法として3つが採用されている。
1)原価法
2)取引事例比較法
3)収益還元法
ところが、上記の評価法は取引の実績がなければ これらの評価方法を採用することができず、不動産の価格がきまらない。
そうなると。。。よりどころは3年に1度行われる固定資産税評価。
それも 評価額が本当に正しいのか?という真面目な議論になる可能性が十分にある。「売れない」「貸せない」不動産に価値があるのか?と納税者が
自治体・行政に問いかけた時、彼らはどうこたえるのか????このような事態になればなるほど、価値を生まない→ 価値を生まない不動産に対する見方は厳しくなる。
利用価値が減ずることによって、当然地下は下がる、そしてその下がる価値に追随しない、あるいは、出来ない課税側との争いごとが急増する。-と予見できる。
どうにも困った状況に陥りそうです。
そんな状況をこまねいてみているばかりの自治体ばかりではなく、現実を真摯に受け止めて、改革を進めている自治体もあるらしい。
本書では 富山市のコンパクトシティ と呼ばれる施策を事例に挙げている。
第3章 日本の不動産の構造変革
都心マンションが売れる裏側で
「視界良好」が続いているように見える不動産業界であるが、実は 土地の仕入れ値の値上がり+建築費用の値上がり ダブルパンチで 原価構成が30%も値上げしてしまい、更なる上は8%の消費税が加算されるので、仮に4000万円で購入できたマンションが5000万に跳ね上がってしまうのです。
政府が賃金の上昇を唱えたり、「フラット35」などの低利で長期固定の住宅ローンや税金の優遇策で支援してくれたとしても、手の届かない代物になってしまったようです。
進む不動産のコモディティ化
家をもつことは ステータスでもなんでもない、ごく普通・あたりまえに存在することになりつつある。「家」そのものが コモディティ化している。
車を例に 家 VS 車 をたとえてみると決定的な違いは車は朽ち果てていずれはスクラップになる運面であるが、家は経年劣化で価値が衰えてはいくものの、「所有権」が存在する。建物が朽ち果てて消滅しても土地は永遠に残っていく。つまり、
コモディティ化した空家はその場にどんどん堆積されて住宅としてのこっていく。
住宅に対する人々のニーズも時代とともに変化している。では ニーズに合わせて住宅を提供してくことが住宅を求める市場の今後の方向性指南となるのか?
ところが、このベーシックなニーズとなるカストマーがいない。。というのが現状である。
最初に買った住宅から前進・後進もできなくなってしまった状況が起こっているようです。
「本郷もかねやすまでは江戸のうち」
世界の誰もが経験したことのない事態に、日本は突入しようとしている。
65歳以上の高齢者の割合が38.9%となり、日本人はおじいさんとおばあさんの社会になっていくのです。
こうした社会の変化に対応していくためにはお年寄りを中心にした都市づくりを著者は本書で提案しています。
江戸の発展を大火との戦いを事例にあげ、享保16年(1721)の大火で大きく江戸の町が失われた当時の復興大臣「大岡忠相」が本郷の小間物問屋「かねやす」を江戸の北限に設定したことを提言し、
大岡忠相のように東京の線引きをやり直す時代が来ることが来るかもしれない。
東京は山手線の内側。外側は昔のように田畑となり、東京は江戸に回帰していく。
つまり、江戸・東京の縮小化を予想している。
現実的ではないにしても、ありえない予想でもない。
ここでも著者は 現実に向かいあい、世の中を俯瞰しながら対策を練っていくことを
問題提起している。
一気にここまで書いてみて、「空き家問題・2020年東京オリンピック後の東京」がひしひしと背後に忍び寄る気配がしてならない。
日本を離れて、海外へ活路を見出す? もしくは空き家活用方法を 国民・自治体・企業がタッグを組んで乗り越えていけるのか?
ここ日本で見定めていきたいと思う。