*乱読事始め*

気の向くままに視覚に入った本・インスピレーションを感じた本の感想を書いてみます。

大君の通貨 幕末 『円ドル』戦争

1854年 アメリカの黒船 ペリー提督の一行が下田に現れ、江戸幕府は開国を迫られる。
日本史、世界史の教科書にはたった数行で片付けられてしまっているが、
この行間の隙間にどんな歴史の事実が潜んでいるのか?
考えた事はあっただろうか?

本書は 幕末日本が開港した時に、横浜で小判が大量流出した。。。。
それは日本と諸外国の金銀比価の違いから生じた事で、原因は日本人の
つまり時の江戸幕府の大名達の無知から生じたせいだと。……アングロサクソン達の史実では
説明されている様である…。

果たして、真実は彼らの主張通り?だったのであろうか?
当時の江戸幕府は無力で愚かだったのであろうか?

かねてからの疑問を解くべく、作者 佐藤 雅美氏 の挑戦が始まった。

物語はイギリスの初代駐日外交代表 ラザード・オルコックが辞令を受け、日本に来航した1859年、もしくは
安政6年 ここから物語が始まる。

大筋のストーリーは
無理難題とゴリ押しで私腹を肥やした米国公使 タウンゼント・ハリス 及び ハリスを訝しげに観察しながらも、結局はハリスに同調し対日圧力を加速した イギリスの初代駐日外交代表 ラザード・オルコック 二人の確信犯が 為替操作で資産を増やし、江戸幕府を凄まじいインフレに陥れた。。。そんなとこでしょうか?
結果、この騒動をきっかけに江戸幕府は崩壊し、明治維新が起こり 近代化日本に生まれ変わるのであるからして、災い転じて福が来たと言えるのだろうか?

それにしても、日本人という立場で本書を読み進めるのはすこぶる 不快である。
幕府の通貨政策に対する無策ぶりと情報と知識不足の外交音痴には。。。現在の外務省、 日本政府をそのまま投影している様にも思えるのはわたしだけなのだろうか? 
いやいや、そうでは無い。
江戸時代末期に幕府が遭遇した負の歴史、
日本人であるならば、知っておきたい 史実の一つの様に思えてならない。

本書の初版は19年前の1984年。通貨の物語 なので難解だったのであろうか?
あまり部数は伸びなかった。。。。様である。 誠に残念。
その後、文藝春秋から 大幅に手を加えて 新版が出された。というこれもまた、再び世に出るには波乱の事情があったようだ。
埋もれるには惜しい内容ですからね。。。
多くの日本人に読んでもらいたいものである。

大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)